不純な理由で近づきました。
コクリ、と頷いたわたしにナルちゃんはそっか、と言って優しく微笑んだ。
「情けないよね。あんなことで、怖くなっちゃうなんて。
自分でも、分かってるんだけど……」
思わず卑下するわたしに、ナルちゃんはゆるゆると頭を振る。
「りっちゃん。情けなくなんかないよ。
誰だって怖いものの一つや二つあるから。ね?」
ぽんぽん、と頭を撫でてくれる手は、どこまでも優しくて。
兄さんよりちょっと低い、ほんのりとあたたかい温もり。
……恭くんは、もっと低かったな。
って、なんで今恭くんのことを思い出したんだろう。
自分でも不思議で心の中で首を傾げる。
「りっちゃん?」
どしたのー?というナルちゃんになんでもないと首を振る。
「ナルちゃん……ありがとね」
「んー?どういたしまして」
その後、一時間ぐらいナルちゃんと話をしていた。
その内容というと兄さんたちの仕事の話だったり、わたしの学校生活のことだったり。
特にわたしが恭くんとカインくんという友達の話をすると、ナルちゃんは嬉しそうに聞いてくれた。
「おーい、終わったぞ」
「あ、おつかれー」
「お疲れさま、兄さん」
はい、とお茶を渡すとごくごくとそのお茶は兄さんの口の中に吸い込まれていき。
この人、約三秒で飲み終わったよ。
そんなに喉渇いてたのか。
「じゃあ家まで送るねー」
「当たり前だ!!俺と六花の時間を邪魔しやがって……」
まだ根に持ってたのか。
仕事だから仕方ない、というかむしろ今日は兄さんが無理矢理休んだのに。
……その原因はわたしですが。
「ナルちゃんはこれから何かある?」
「なんにもないよー」
「じゃあうちでご飯食べてく?」
最近はそういうのめっきりだし。
久しぶりに一緒に食べたいな、なんて思ったのだけど。