不純な理由で近づきました。




「六花、片づけは俺やるな」


「いいの?」


「おー。今のうち風呂行ってこい」



でも、ナルちゃんもいるのにいいのかな。


チラ、とナルちゃんを見るとマイペースにテレビを見ていた。


さすが幼馴染み。


すでに我が家のようなくつろぎ方。


じゃあ、と兄さんの言葉に甘えて、わたしはルームウェアやバスタオルを持ってお風呂場へ向かった。





ザアァァ、と熱いシャワーを浴びる。


軽く顔を洗ってから髪をまとめて浴槽に浸かった。



はぁ……落ち着く。


わたしは一年中お風呂はゆっくり浸かる派だ。


ちなみに兄さんはシャワーでさっさと済ませてしまう派。


母さんも兄さんと同じで、父さんはわたしと同じ浸かる派。


こんなところでも遺伝子の偉大さが表れている。


むしろ外見だけ母さんに似ているのが不思議だ。



「んんっ、気持ちいー」



兄さん、シャワー派のくせにいつもわたしのお風呂の用意してくれるんだよね。


今日の入浴剤はラベンダー。


この香りには鎮静効果があると知っていてこれを選んだのか……


いや、兄さんに限ってそんなことがあるわけない。


ないない、と一人首を振り、髪を洗うために浴槽からあがった。





リビングに戻るとなぜか兄さんがいなくて。


ナルちゃんが一人、ソファに座って優雅にワインを飲んでいた。


って、お酒って……ナルちゃん帰らなくてもいいのかな。


家近いから歩いても帰れるけども。



「ナルちゃん、兄さんは?」


「じゃんけんで負けたからおつかいだよ。
コンビニでビール十本とチューハイ六本とワイン二本とプリンとゼリーとケーキ三個。
あとチョコのお菓子なんでもいいから五個」






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