不純な理由で近づきました。
兄さんはどちらかと言うと、ちょっとスパイシーな香水をつけている。
いつもと違う香りだけど、やっぱり不思議と心が穏やかになる。
「りっちゃん。大丈夫だからね。
なんかやなことあったら、またこーやってギューッてしてあげるから。
辛かったり苦しかったり、悲しくてたまらなかったら我慢しないで言ってね。
オレは、りっちゃんの味方だよ」
サラサラと頭を撫でながらナルちゃんは穏やかに言葉を紡ぐ。
小さくい頃から、ナルちゃんの声はあったかくてすごく落ち着く。
なんというか、ハチミツを入れた甘いホットミルクを飲んだときみたいな?
優しくて、あったかくて、心がぽかぽかするような。
そういえば、兄さんにも言えないような悩みをナルちゃんに話したときは、ホットミルクを作ってくれたっけ。
懐かしい思い出に思わず笑みがこぼれる。
「んー?りっちゃんどしたのー?」
「ふふっ……ううん、なんでもないよ」
体の力を抜いてナルちゃんに寄りかかるようにもたれる。
ナルちゃんのバニラの香りを感じながら、わたしは目を閉じた。
うん、もう大丈夫。
こうやって不安を和らげてくれるナルちゃんや、心配してくれる兄さんがいるから。
だからわたしは頑張れるんだよ。
他愛もない会話をして兄さんの帰りを待って。
その後兄さんが買ってきたケーキをみんなで食べた。
コンビニのケーキなのに、その夜食べたケーキはお昼に食べたケーキよりもずっとおいしく感じた。