不純な理由で近づきました。




昼休みを告げるチャイムと同時に、わたしは席を立った。



授業中、ちゃんと恭くんと話したい。


あのことについて…昨日のことについて話をしたいと強く思った。


恭くんに、知ってほしいと……


怖くない、と言ったら嘘だけど、でも……



ちゃんと、向き合いたいの。


いつまでも逃げていたくない……



向き合う強さがほしい。


恭くんと、話すことで、ちょっとでも前に進めたら……これが、きっかけとなればいいと思う。



で、でも、できるだけ自分の弱さを見せたくないというのも本音で。


カインくんがいるところで話すのは、ちょっと気が引けるかも……


一度トイレに行って心を落ち着けてから、わたしは空き教室に向かった。




「あ、鍵開いてる……」



みんなで集まるようになって、鍵が一つだと面倒だから、という理由で合鍵を作り。


だからこの教室の鍵は恭くんもカインくんも一つずつ持っている。


ということは、先に誰か来てるのか……


扉を開いてみると中には恭くんだけがいて。


わたしは思わず目を丸くした。



「恭くん……」



こぼれた声に恭くんはこちらを向いて。


わたしの表情から何かを悟ったようにちょっとだけ口元を緩ませた。



「カインは外してもらった。白崎とちゃんと話した方がいいと思って」



その言葉と声に、ドキッとした。


言葉はそのままの意味で、声は……わたしが今まで聞いたことがないぐらい真剣だったから。






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