不純な理由で近づきました。




「はーい、そろそろ行こっか。りっちゃん遅れるよー」


「うん」



兄さんとは逆の手をナルちゃんに伸ばす。



「おいおい六花。
ナルに手ぇ伸ばすなんて、お兄ちゃん妬けるよー?」


「言ってなよー、灯夏ちゃん」


「あっ、くそっ、ナルてめぇ!!」


「ほーら、兄さんもナルちゃんも行くよ!」



グイ、と手を引っ張って二人を連れていく。



兄さんも名前呼ばれたぐらいでそんなにムキになっちゃって。


そんなに嫌なのかな。


綺麗な名前なのになー……



ギャイギャイと二人のやり取りを聞きながら、わたしは学校に向かった。












――――――――――――――――――
――――




「おはよう」


「おはよー」



クラスメートに挨拶をして席に座ると、ちょうど担任の先生が入ってきた。



「みんなー、今日は大切なお知らせがあるからちゃんと聞きなさーい」



その言葉と一緒に配られたのは一枚のプリント。



「最近、この近くでよく小学生を狙った不審者が見られてるから気をつけるのよ。
暗くなる前にお家に帰ったり、怪しい人がいたら大声で叫ぶこと。

ちゃんと親御さんに、このプリントを渡してねー」



はーい、とみんな気のない返事をする。


かくいうわたしもその一人。


だってそんなことを言われても現実感ないんだもん。


そこまで深く考えず、わたしはそのプリントを机の中に片づけた。







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