不純な理由で近づきました。
―――ザッ、ザッ、ザッ…
「っ……」
歩くたび、後ろから足音が追ってくるように感じる。
なに……なんなの?
朝、担任の先生に言われたことが頭の中に蘇る。
そんな…まさか……ね。
可能性を否定するけど、足音はどんどん近いてくる。
どうしよう……怖い……っ
歩くを通り越してもはや走っているわたし。
とりあえず、少しでも人のいる通りに出なきゃ……!
近づく足音。
せりあがる恐怖。
苦しくなっていく呼吸。
怖いよっ……
「だれ、か……っ!!」
そう手を伸ばした瞬間、グイッと逆の腕を掴まれて。
反射的に振り返ったわたしは、そこにいる人を認識する前に、暗い闇に意識を塗り潰されていった。
次に目を覚ましたとき、そこは真っ白な部屋だった。
「こ、こ……」
どこ?と体を起こしてみると、ちょっとだけめまいがした。
でもそれはすぐにおさまって。
周りを見渡してみる。
この、匂い……消毒液?
「もしかして、病院?」
どうしてわたし、こんなところにいるんだろう。
首を傾げていると扉が開いた。
「兄、さん……?」
「っ、六花!!」
慌てたようにわたしに駆け寄ってきて、兄さんはぎゅうっとわたしを抱きしめる。
苦しいぐらいに抱きしめられて、わたしの頭の中は『?』がいっぱい浮かんでいた。