不純な理由で近づきました。




学校に着くと、なんだかみんなソワソワしていて。


久しぶりに来たからそう感じるのかな。



朝の挨拶をすると、みんなおはよう、と返してくれる。


でも、それだけ。


いつもみたいに話しかけてくれない。


そのくせいつもより視線は感じてしまう。



どうしたんだろう……


なんか、気持ち悪い。



居心地の悪さを感じながらも、表面だけはいつも通り学校で過ごしていた。


そんな生活を続けて一週間。


常に視線を感じている中で、久しぶりにクラスメートに話しかけられた。


それもクラスの中で、いわゆるガキ大将というか、リーダー的な男の子で。


何を言われるんだろう、と心臓が嫌な音を刻む。



「おまえ、すっかり有名人だな」


「え……?」



どういう意味なのかが分からなくて首を傾げる。


それが気に入らなかったのか、イライラしたようにその男の子は口を開いた。



「みーんな、おまえのことウワサしてるぜ?
"誘拐されそうになった女の子だ"ってな」



思わず、目を見開いた。


そんなウワサがあったなんて、全然知らなくて。


それに、わたしがそういうめにあったことは、母さんと父さん、兄さんとナルちゃん、そしてわたししか知らないはずなのに。



「なんで、知ってるの……?」



このとき、黙っていればよかったのに、と後悔しないときはなかった。


そうすれば、こんなトラウマなんて、なかったのに、と。





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