不純な理由で近づきました。
「…はっ……さ、ん…っ」
怖いよ、怖いよ……助けて……
「兄さぁんっ!!」
抱きしめて、頭を撫でて、わたしのそばにいて……っ
兄さんのいるであろう高校に駆け込む。
「兄さっ…兄さぁんっ!!」
ザワザワと騒がしくなる高校。
それに比例して増える視線に、体が震える。
怖いっ、怖い……っ
「兄さぁんっ!!」
ポロポロとこぼれる涙を拭いもせず、わたしは兄さんを呼び続けた。
ただ怖くて、必死だった。
「……か、六花!!」
ハッとして顔をあげると、校舎から兄さんとナルちゃんがこちらに向かって走っているのが見えて。
恐怖じゃない、安心から更に涙がこぼれる。
「六花、どうし、」
「兄さんっ!!」
思わず兄さんに抱きついて、何かの箍が外れたように大声で泣き。
そんなわたしを兄さんは戸惑いながらも抱きしめてくれて。
そのまま兄さんはわたしを家まで連れて帰ってくれた。
視線が、見られることが怖くて。
外に出たくないとべそをかき。
母さんや父さん、兄さんにもナルちゃんにもたくさん迷惑をかけた。
家から一歩も出られなくなって、いっぱい心配もかけた。
何度も何度も、あの場面が思い出された。
だんだん大きくなる恐怖と、恐怖が弾けた途端に襲ってきた真っ暗な闇。
「、いやああぁっっ」
綺麗な過去は、更に綺麗に、宝石みたいに輝いて。
醜い過去は、恐ろしいものとなってわたしに襲いかかる。
わたしは…………