不純な理由で近づきました。




「ぐす……あり、がと」



冷静になると恥ずかしいような。


前は仕方ないというか、それより恐怖が勝っていたというか。


それに途中で意識が飛んでいってたけど、今は、ね。


恥ずかしいの一言しか出ないわ。


瞳に浮かんだ涙を拭うためにメガネを外す。



「そんな強く擦ったら痛いだろ」


「ん、大丈夫、」


「でも赤くな、って……」



ピタ、と止まる言葉にわたしは顔をあげる。


何かに驚いているように、その目は大きく見開いていて。



「恭くん……?」



首を傾げるわたしに対して、ハッとしたように恭くんは顔をそむける。


手で顔の下半分を隠すようにしていて、その頬は微かに赤みを帯びているような。



「ちょっと、予想外に駄目かも……」


「……?」



何がダメなんだろう、と問いかけるようにわたしは恭くんを見つめる。


その視線に気づいたのか、恭くんはこちらに顔を向けた。


至近距離で見つめあって、心なしか心臓の音が速くなっていく気がした。



「あれ、白崎…大丈夫か?」


「な、なに、が?」



そう言うとだって、と言葉を出して恭くんはわたしの手の中にあるメガネを指さした。






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