不純な理由で近づきました。
「俺、遠慮とかしないから」
「……はい?」
脈絡なくないですか?
ポカーン、とするわたしを見て、恭くんはふっと笑い。
その綺麗な顔をわたしに近づけた。
思わずギュッと目を閉じると、くつり、と耳元に息がかかって。
くすぐったくて、ヘンな感じ……
「絶対オトして見せるから。覚悟してろよ
―――――六花」
「っ、」
ゾクリと、体の芯から震えてしまうほどの色気のあるセクシーなバリトンボイス。
腰が砕けてしまうかと思った。
心臓が、何か運動をしたあとみたい。
ううん、それ以上に速く動いていて、体温が急上昇する。
真っ赤になったわたしの手を恭くんは離し、置かれていた手もなくなる。
その手の中にあったメガネを元通りにかけさせた。
薄いレンズ越しに見た恭くんは、わたしが今まで見たどんな表情にも負けないぐらいに妖艶で。
艶かしい笑みに密かにわたしの心臓は悲鳴をあげた。
今日、わたしのトラウマや、恭くんとの関係が
少しだけ、変わったような、そんな気がした。