不純な理由で近づきました。
「六花ちゃんの家は?」
「わたしですか?」
大丈夫、と言いたいところだけど、わたしも仕事に追われている兄さんが今家にいて。
なんでも、期日までに新しいデザインを仕上げるんだ、と言ってここ数日ちゃんと寝ていないみたい。
できることなら兄さんのためにも家は静かな方がいいし。
それに、少しゆっくりさせてあげたい。
曖昧に笑みを浮かべるとそれで通じたらしく、カインくんはちょっと残念そうだった。
「まぁ、もう夏休みだし。そのときみんなで集まろ」
「そうですね」
カインくんの言葉に笑顔で答えると、なぜか恭くんがカインくんの頭を叩いて。
「ちょ、何するの!?」
「あ、ムカついた」
「え、でもボク何もしてな」
「でもムカついた」
「それ理不尽だよね!?」
その会話がまるで漫才みたいに見えて、わたしは更に笑ってしまった。
ふわりと、生温い風が窓から吹いてきて、サラリと前髪が揺れる。
「夏休み、か……」
友達が、恭くんとカインくんがいる夏休み。
今までの夏休みはいつも一人で、兄さんやナルちゃんしか会って遊ぶ人がいなかった。
でも今年は……
思わず頬が緩む。
今年の夏休みは、すごく楽しくなるような、そんな気がした。