剣のお姫様と豊穣の王子様
その瞬間、回りの兵士や侍女達からどっと歓声が湧く。

「流石です、カレイラン王女」

悔しそうな表情だが、きちんと敗北を認めるところは彼の美点だろう。

なかには居るのだ。自分が負けたことを素直に認められずに逆恨みをするものが。

そのことで内心この近衛兵の若者の好感度をあげつつ口を開く。

「なに、それほどでもないさ。私程度何処にだっているよ」

それは間違う事なき事実だ。

確かに体は強靭でしなやかな方だと思う。

けれど、私には圧倒的に実践経験が足りないのだ。

戦場での経験と言うものはそれこそ価千金の価値がある。

何事にも例外はあるが、大体体力気力ともに充実している若兵よりも古参兵の方が生き残りやすいというのがその最たる例だ。

それはさておき、近衛兵の最後の一言に聞き逃せないものがった。

「カレイラン王女?私のことはカレンと呼べと言っただろう?」

じっと目の前の男を見つめる。

身長が高いというのはこういうときに便利だ。

「.......王女は良くても、俺の首が飛びますよ!」

彼が悲痛な顔で首を掻き切る動作をする。

「大丈夫だ。公の場はさすがに出来ないが、今は戦闘訓練中だぞ?妙な身分を持ち込んでする物じゃない」

身分で手加減をされるのは、非常に屈辱的なものなのだ。

己が実力で無いものに護られるのだけは未だに慣れない。


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