海のひまわり
香澄の家は神社の裏の奥の方だった。
香澄も先月、美咲の家の隣からここに引越してきたらしい。
学区は違うけど、市内なので転校しないで、ここから学校に通っているらしい。
「遊びに来たよーんww」
「暑い中、お疲れ様ー。」
「お邪魔しまーす」
何もないけどゆっくりしてってね、と微笑む香澄は何度見ても癒される。ちなみにあたしらん中では『香澄スマイル』と呼んでいる。
香澄の家の廊下にはたくさんの賞状と写真が飾られていた。
「コレ、香澄?ちっちゃーい!かわいいww」
「あぁ、それね。小学校ん時の。初めてみなと祭りに出たやつ。」
あたしは『みなと祭りに出る』という表現が、よく分からなくて首をかしげた。
「あ!里ちゃん、もしかしてみなと祭り初めてじゃない?」
「あ!じゃあ『よしこの塩釜』とか知らないんじゃない?」
「え?『よしこ』?誰?」
二人の話によると(美咲の話はほとんどでたらめだったが…)
『よしこの塩釜』というのは、この塩釜に昔から伝わる踊りなんだそうだ。
市内の小学生は大人から基本の踊りをマスターしアレンジして、お祭りの日、商店街を、まるでパレードのように、踊りながら練り歩く。
小学生の部、中学生の部、一般の部などがあり、それぞれが最優秀賞である『市長賞』に向けて頑張るのだそうだ。
「あ!一年生は全員参加だよ!」
「え?じゃあ、あたしも出れるの?」
「うん。もちろん」
「よっしゃあ!うわぁ!なんか楽しみだね!お祭り!」