嘘を重ねて。
「ユエだよね?どした?」
「…っ!!」
声を掛けたのは
…タクだった
私はタクに歩み寄ると言った
「ごめんタク…今日、泊めてくれる?」
一瞬驚いた顔をしたが
すぐに“いいよ”と言って笑顔を見せた
「ありがと…」
お礼を伝えるとタクは
私の手を引いて歩き出す
着いた場所はお店
扉を開けると中に客は居なかった
「今日はおやすみなのね…」
「うん。たまには休みもいいかなーと思って」
“こっちこっち”と手招きをするタク
私は招かれた先のカウンターの前に座った
「何飲む?」
そう聞かれて真っ先に浮かんだ
あのカクテル
そんな私を見るとタクは
「アレ。また飲みたいんデショ?」
と言って私の前にグラスを出した
「…いただきます」
「はい。どーぞ。」
グラスを手に取り
一口飲むと口の中に広がったあの味
「美味しい…」
そう小さく呟くと
タクが満足気に笑う
「カクテル。この中に入ってるから」
“好きに飲んでいいよ”と言い残して
タクは店の中にあるソファーに腰掛けた
私は目の前のグラスに
もう一度目を移すと
冷たい現実から逃れるように
カクテルを口に運んだ