嘘を重ねて。
今の“ごめん”の意味は何なのだろう
私を見つめるタクは
悲しそうに微笑んだ
「タク…」
彼は今何を思っているのだろう
微かに瞳を揺らすとタクは私を抱き締めた
「ユエ…愛してる」
「…っ!!」
ベッドの上で行為をしている時にしか
“愛してる”と言われた事がなかった
…雰囲気作りの為に言っているのだ、と
ずっとそう思っていたのに
「ねぇ、タク」
「ん…?」
“タクの抱えてる痛みは 何?今誰を想ってる?”
そう聞こうとした。
でも出来なかった
私とタク、2人の暗黙のルール…
…干渉はしない。
私とタクはセフレ
それ以上でもそれ以下でもない
「そういえばユエ」
思いついた様に私を呼ぶ声
顔を上げるとタクは言った
「ユエ…泊まる?しばらくここに」
「え…いいの?」
戸惑いを隠せずにいると
“勿論”と言いながらクスッと笑う
「もうすぐ夏休みだろ?」
「そうだけど…」
私が口篭っていると
タクは1人で頷いている
そして、
「決定」
そう言われて私は
「あ…はい、お願いします」
と返すしか無かった
さっきの切なげな様子とは一変
すっかりいつものタクに戻ったようだ
目の前で満足気に笑うタク
元気になったならそれで良いと思った
「1度帰らせて?色々持ってくる」
そう伝えると
私は1度家へと戻った
“ガチャ”
何だか久しぶりにも感じる家
中の空気は相変わらず冷えきっていた
「…用意しなきゃ」
早く家を出たい一心で
バックに荷物を詰め込んだ