嘘を重ねて。
「このくらい、かな」
目に付いた必要そうな物を
ひたすら詰め込んだバッグ
それを持って部屋を出た
「…あ、リビングに鍵置いたまま…」
玄関まで来て鍵の事に気づいた私は
バッグを一度置くとリビングに向かった
「鍵…どこ…」
「どこか出かけるみたいね」
「っ!?」
突然聞こえてきた声にビクッと体を強ばらせ
反射的に振り向く
そこには母の姿があった
「随分大荷物ね。旅行にでも行くのかしら?」
そう言ってソファーに腰掛ける母
私は視線を下げると静かに言った
「…関係ないでしょう?」
微かに震えていたかもしれない
弱々しく小さく呟いた
“どうせ私は邪魔なのでしょう?”と
皮肉を込めて
「…迷惑さえかけないなら好きになさい」
嗚呼、やっぱり
思った通りの答えが返ってきた
「…失礼します」
空気に耐えられなくなった私は
やっと見つけた鍵を手に家を出た
外にはもう
タクが待っていた
「おまたせ」