嘘を重ねて。


暫くして
タクが何やら先頭の方から手招きをした


‥‥折角今まで並んでたのに抜けてこいって!?

この頑張り無駄になったら
一生恨んでやる‥‥


そんな事を考えながら
仕方なく列を抜けてタクの所まで向かった



「ユエー遅いよ」


「私の事放置しといて何よそれー」


溜息混じりにそう言うと
タクは“まぁまぁ”なんて言う

そんなタクを見てもう一度溜息を吐くと
肝心な事を聞いた



「‥‥それで?私の努力ムダにするつもりじゃ…」


鋭い視線を送ると
タクは両手をあげて“ユエ怖いー”なんてクスクス笑う

そして私の耳元に口を寄せて言った



「だいじょーぶ。もう入れるよ」




「え、?」


私が聞き返すとニコッと笑みを浮かべるタク


「こちらへどーぞ。ユエお嬢様?」


エスコートするような素振りをしてみせて
またタクはクスクスと笑った


「なんで…」


席に案内されると
口から言葉が溢れる

全く状況が理解できない


私の心中を察したのかタクはまたクスクス笑った
…ムカつく男め

今日2度目の鋭い視線を送ると
タクはまた両手を挙げた



「前の女の子にお願いしたら譲ってくれたのー」


「そういうことね…」


やっと理解出来た

そうだ。私は大事な事を忘れてた。


タクは世に言う“イケメン男子”である訳で…
女の子を落とすなんて朝飯前の男だった



「ユエ喜ぶと思ったんだよー。放置してゴメンね?」




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