pure
「なにしてんだよ。」
後ろから低い声がした。
振り返ると優君が不機嫌そうに立ってる。
「なんだよ、お前」
私の腰に手を回したまま男の人が優君に言う。
「・・・・・それ、俺の。」
それだけ言うと、私の腕をぐっと引っ張りあっというまに優君の腕に包まれた。
うっすら香水の香りとタバコの匂い。
優君の匂いに包まれた。
優君の威圧と眼力でひるんだ男の人は「んだよ、男もちかよ」と呟くとどこかへ行ってしまった。
男の人が見えなくなると優君は何も言わず私から離れる。
私は何も言えなくて。
さっきまで怖かったこととか。
優君が助けてくれたこととか。
抱きしめてくれたのに、すぐ離された腕とか。
私に背を向けたままどこかへ歩いていこうとする優君の背中とか。
頭が混乱して。
「ふぇっ・・・」
足がガクガクして、立っていられなくなって。
その場にしゃがみこんで、泣き出してしまった。
私は両手で自分を抱きしめるように小さくなる。
すると、ゆっくり優君がそばに歩いてくるのがわかる。
私の前まで来ると何も言わずに優君もしゃがんだ。
私は、震えた声で
「こわかったぁ・・・」
それだけ言った。