困惑の予言者
「大体、どこにも信用の置きようがないあんたの言葉を信じて、よしんば、僕が未来に期待して生きてみたところで、実際そんな都合のいい未来が訪れる はずがないじゃないか。いや、もしかしたら訪れるかもしれない。だが、訪れないかもしれない。だとしたら、今死なずに、努力した僕は一体何だと言うんだ。 ただの馬鹿じゃないか。僕は、自分が自分一人で生きているのではない事くらい知っている。僕が死んだら、悲しむ人間だっているだろう。だが、それでも敢え て死を選択したんだ。あんたにそれを止める権利は無い。少なくとも他人のあんたには」

 ああ、なんと言うことだ。このままでは、少年は死んでしまう。もしかしたら、私はやり方を間違ったのかもしれない。そう、あの時のあの人は、私を 止めないと言った。私の死を。そして、死はリタイヤだと言った。そして私は死を思いとどまった。だが……この少年にそのような甘い考えが通じるのか?

 いや、それとも他人の私に止められるいわれがないとするならば、私が少年の未来の姿だと明かしてみるのがいいのだろうか?

 それとも―――。

「ああっ! やめてくれ! 死なないでくれ! 君が死んだら、私の全てが崩れる、崩れてしまうんだ。頼む、頼むから、死なないでくれ! 生きてくれ! 何でもいい。理由なんて、何でも……。いや、私の為に生きてくれ。私を助けると思って生きてくれ!」

 気がついたら私はしゃがみ込んで少年に向かって手を合わせていた。涙があふれていた。

 気がついたら、涙と鼻水でぐしゃぐしゃに塗れた顔で、地面についたため泥の付いた手で、少年の足に縋り付いていた。

「…………おい」

 当惑しきった少年の顔が涙の向こうで歪んで見える。
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