ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
飲み込んだばかりのうどんが、
鼻から出そうになった。
ケホケホと咳込み、慌てて麦茶で流し込んだ。
「全然違います!もったいないのは、ソレじゃありません!
というか、何で私がバージンだと知っているんですか!?」
テーブルをバンと叩いて聞き返した私の声は、
音量が大き過ぎたみたい。
賑やかだった社食内が、一瞬にして静まり返った。
その後は笑われたり、ヒソヒソ囁かれたり、大注目を浴びてしまった。
「しまった」と思った時には遅かった。
この場にいる大勢の社員に、私がまだ処女だと知られてしまった。
体中の血液が、顔に集まるのを感じていた。
恥ずかしさに耐えかねて、由香に食器の片付けを頼むと、
逃げるように社食から飛び出した。