ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
堂浦さんは、すぐ横にあったドアを開けた。
そこは、会議室A。
うっかり新ビール夏美についての会話を聞いてしまい、
スパイ容疑をかけられることになった、元凶の部屋だ。
中に押し込まれ、ドアを閉められた。
私が逃げないように、彼はドアを背にして立ち塞がる。
「何するんですか!
出して下さい!」
そう抗議しても、出してくれない。
「今出すと、ちょっとヤバそうだから……
少しお話しよ?ねっ?ねっ?」
何とか私をなだめようと、そんなことを言ってきた。
セクハラ大魔王と、何を話せと言うのだ。
話せば話すほど、傷が増えるだけなのに。
色んな女性を見てきた堂浦さんにしたら、
きっと私は幼稚で、魅力のない女なのだろう。
それは認める。
色気が足りないのも認める。
それを自覚していても、やっぱり馬鹿にされると腹が立つ!