ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
一気にまくし立て、ハアハアと息を荒げた。
論旨は目茶苦茶。
感情だけで理不尽に責めてしまい、まるで子供みたいだと分かっている。
それでも引くに引けず、
敵意のこもる視線を、目の前の彼にぶつけ続けた。
私の目茶苦茶な苦情を、久遠さんは終始黙って聞いていた。
聞き終わった後、彼は無言で裸電球の弱い光を眺めていた。
何かを思い返しているような仕草を見せてから、
驚く事を言ってきた。
「押し倒したことは認めるが、
キスって何だ?
お前にキスした記憶はないぞ?」
目と鼻と口を全開にして、私は驚いていた。
ミカコさん脱走事件の後、
彼に構われるミカコさんを羨ましげに眺めていたら、
ついでに私にもキスしてくれたじゃないか。
あれは、確かにキスだった。
唇が触れて、チュッとリップ音も耳にした。
久遠さんはまさか……あの出来事をスッカリ忘れている?