ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
“これが、キス”
そう言われてしまうと、ミカコさんのついでにしてもらった触れるだけのキスは、
確かにキスと呼べない。
これが、キス。
私達のファーストキス……。
まだ足に力が入らず、一人で立てそうになかった。
そんな私を、久遠さんはしっかり抱いて支えてくれる。
仕立てのよいダークスーツの背中を、私もギュッと両手で掴んでいた。
落ち着き払った低音ボイスで、
彼は私を諭す。
「お前が理解するべきことは、
二つだ。
一つは、堂浦の作戦に俺は加担していないということ。
堂浦や三国だって、口先だけだぞ?
実際に無理やり、お前の気持ちを操ろうとしてはいないだろ?」
久遠さんの言葉が、今はすんなり頭に入ってきた。
物凄いキスで衝撃が上塗りされたお陰で、
責める気持ちを失っていた。