ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
 


久遠さんが言うなら、そうなのだろうと信じることができた。



私の恋心は誰に操られたものじゃなく、自然に生まれたものなのだと。



久遠さんが好き。


好きだから、もっと一緒にいたい。



でも、これでお終いなのは分かっている。


同居は終わりで、後は距離が離れて行く一方なのだと。



淋しい気持ちになり、泣きたくなる。


彼の胸に顔を押し当て、表情を隠した。



その姿勢で、続きの言葉を黙って聞いた。




「二つ目は同居についてだ。

それも、お前は勘違いしている。


これで終わりだと思っているようだが……

俺が何て言ったか忘れたのか?

さっき客室のベッドで、言ってやったばかりだろう?」




客室のベッドで言われた言葉?



それは少し前の出来事だから、
すぐに思い出すことができる。



久遠さんは私を抱きしめて、確かこんな話をしていた。




『二ヶ月間、情報を守ってくれてありがとう。

同居を強いて、悪かったな。

これからはお前の自由にしていいから……』




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