ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
“お前の自由にしていい……”
自由に?
私が自由に決めていいの?
ということは……
彼の胸からパッと顔を離して、
上を見た。
形の良い唇は、微かに笑っているようにも見えた。
期待に胸を震わせ、聞いてみる。
「私……これからも久遠さんのマンションに住んで……
いいのですか……?」
ドキドキしながら、期待する言葉を待っていた。
久遠さんは口を開きかけたが……
問いには答えず、なぜか表情を険しくした。
彼が鋭い視線を向けた先には、
壁があった。
私にも異変が伝わる。
急に壁の向こうがザワザワし、
話し声が聞こえてきたのだ。
「おーい、全員集合!
明日10時開始の、結婚披露宴の準備だ。
円卓数40。イス数322。
高砂用テーブルは大の方で」
「チーフ、サイドテーブルは設置しますか?」
「いらない。それとドリンクカウンターは――――」
ここは倉庫のような小部屋。
壁一枚隔てた隣は大ホールで、
そこではどうやら、従業員達が明日の準備に動き出した様子だ。