ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
「夏美、逃げるぞ!」
久遠さんが私の手を引っ張ったが、立てなかった。
「何やってんだ!」
と怒られる。
私だってこの状況がマズイと分かっている。
逃げようと気持ちだけ焦るけど、足に力が入らないのだ。
それは私のせいではなく、久遠さんのせい。
物凄いキスの代償は、後を引いていた。
チッと舌打ちして、彼は私を横抱きに抱え上げた。
「しっかり掴まってろ」
と言われ、彼の首にしがみついた。
「お客さん、こんな場所で何をして……
あっ コラッ!待ちなさい!」
私達を捕まえようとする黒服のホテルマンをかわして、
久遠さんは大ホールを走り、ホールの出口から廊下に飛び出した。
そのままスピードを緩めず、玄関から外へと脱出する。