ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
エレベーターから下りると、スタスタ歩き出した大きな背中に、
意味が分からないまま付いて行く。
久遠さんが立ち止まったのは、
客室のドア前。
取っ手が金色でデザインも洒落ていて、
黒川に連れ込まれた客室と格が違うのは、ドアを見ただけで分かった。
久遠さんはコートの内ポケットからカードキーを取り出すと、
スライドさせて扉を開けた。
背中を押されて、中に入る。
電気をつけると……
豪奢な空間が目の前に広がった。
絨毯はふかふかで、天井にはシャンデリア。
高そうな絵画が壁に飾られている。
開口の広い窓辺には、綺麗な夜景が。
いつの間にか雨は上がり、景色もよく見える。
車のヘッドライトが道路に沿って光のラインを描き、
大都会の美しい夜景が一望できた。
「わぁ!」と歓声を上げて、リビングに駆け込んだ。
ソファーセットなどの調度類はヨーロッパ調で、気品溢れるデザイン。
リビングの向こうには白いドアが二つあり、
両方ともベッドルームと書かれていた。