ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
眺望抜群の豪華な部屋。
これはもしや、スイートルームという物ではないか……?
初めて入るスイートルームにウキウキしてしまったが、
あれ?と思考は振り出しに戻された。
帰るつもりでいたのに、なぜスイートルームに連れて来られたのだろう?
久遠さんは荷物を置きコートを脱いで、バスルームに向かっていた。
「雨で濡れて体が冷えた。
先、シャワーに入らせてもらうぞ?」
まるで自宅にいるような普通の口調で、そう言われた。
「はいどうぞ」と言いかけて、
慌てて彼の腕を掴んで引き止めた。
「久遠さん、あの……
もしや、この部屋に泊まるつもりですか……?」
「ああ」
「な、何で!?」
「疲れたから」
疲れたから?
疲れて家まで帰るのが億劫になり、私と二人でスイートルーム?
その思考回路が理解できず、疑問は解決しそうにない。
掴んだ腕を離せずにいると、
ごく普通の口調の久遠さんに、またしても驚く言葉を言われた。
「シャワー、一緒に浴びるか?」