ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
その疑問は、どうやら顔に出ていたらしい。
久遠さんは眉間にシワを寄せて言った。
「お前、俺と結婚が無縁だと決め付けていないか?」
「…… だって、久遠さんは研究所時代に恋人と……」
「あれはもう十年も前の話だ。
女は苦手だが、嫌いじゃない。
結婚願望は確かにゼロに近かったが、お前と暮らし始めて変わった。
二度と見合いはさせない。
お前に無茶させるくらいなら、
すぐにでも結婚してやる」
結婚……?
私……久遠さんのお嫁さんになれるの……?
頭の中に、リンゴンと教会の鐘が鳴り響く。
心は憧れのウェディングへとトリップしてしまい、現実から離れてしまった。
胸に婚姻届を抱きしめて、うっとり夢心地に浸る私だが、
腕を引っ張られ、ベッドに倒されて、無事現実世界に戻ってきた。