ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
手から大事な婚姻届を奪われ、
床にポイッと捨てられた。
「ああっ!」
急いで婚姻届を追おうとした手は、捕まえられてしまった。
「約束してやったんだから、もうこっち向け。
これでお前のポリシーにも矛盾しないし、問題解決だろ?」
怒ったような口調で、ポリシーと口にする久遠さん。
その言葉に驚かされた。
私の変なポリシーを、なぜ久遠さんが知っているのか?
打ち明けていないのに、
どうして……?
その答えを、すぐに自分で見つけ出した。
堂浦さんだ。
堂浦さんが久遠さんに教えたのだ。
軽薄全開、口も軽いチャラ男は、人のナイーブな事情を勝手に暴露して……。
でも、今回は責められない。
逆にお礼を言うべきかも。
結果として、久遠さんが私と結婚してくれると言ったのだ。
婚姻届までくれて、最高の幸せが約束されたも同然だった。