ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
今月号をフムフムと読み込んでいると、
丸テーブルにパステルグリーンのバッグがドサリと置かれ、誰かが向かいに座った。
雑誌から顔をあげて前を見る。
それは同僚の由香だった。
「え? 由香も休憩入っていいと言われたの?」
確か由香は午前中に終わらせる予定の仕事を、ついさっきもやっていたはず。
首を傾げる私に、出世欲ゼロの由香はニヒヒと笑って言った。
「言われてないけど来ちゃった。
だって疲れたし。夏美だけ休憩なんてズルーイ」
呆れることを言う由香に、
「後で怒られも知らないよ?」と言いながらも、
話し相手ができて嬉しく思った。
由香は私の手元からブライダル情報誌を奪い取り、パラパラとページをめくる。
「まさか夏美に先に嫁に行かれるとは思わなかったー。
しかも相手はイケメン高給取り。
あんたを尊敬するわ」