ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
デヘヘと照れる私を、由香も幸せそうな目で見てくれた。
「ノロケ話聞いてあげるよ。
久遠さんって、家ではどんな感じ?
甘い台詞を囁く姿って、想像できないなー」
由香はどうやら、久遠さんの隠れた甘さを知りたいようだ。
知りたいのなら教えてあげよう。
そう思い、上機嫌で口を開きかけた私だが、
あれ?と思考がストップしてしまった。
久遠さんの隠れた甘さって……何?
初体験の時以来、時々体を重ねて素敵な時間を過ごしているけど、
甘い台詞を言われた記憶がなかった。
抱き合っている最中にさえ甘さはないのに、
日常生活が甘いわけない。
今朝だって行ってきますのキスをせがんでも、
呆れた顔をするだけでしてくれなかったし……。
由香の望むノロケ話ができずに、
私の表情が徐々に強張っていく。
それを見て由香は何かを察知し、慌て始めた。