ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
ホップ畑で抱きしめて
◇◇◇
4年後、夏――。
ここは東北。山合いの田舎町。
あくびをしてベッドから下りた私は、窓辺に寄りカーテンを開けた。
夏の強い朝日が差し込み、眩しさに目を細める。
外は早起きの蝉たちが、もうミンミンと賑やかに鳴き立てている。
空は快晴で、今日も暑い一日になりそうだ。
久遠さんと別れた日から、今日でちょうど4年になる。
突然一方的に別れのメールを送りつけた私を、彼がどう思ったかは、知るすべがない。
あれから一度も会っていないし、連絡していないから……。
東京を去った私は、しばらく実家でぼんやりしていたけど、
いい歳して母親に甘え続けるわけにいかないので、翌月には新しい職場を探した。
見つけたのは、実家の隣町にある、地ビールの工場。
アルバイトの事務員として三ヶ月働いたあと、正職員にしてもらえた。
それで実家を出て、工場のあるこの田舎町に一人暮らしのアパートを借りて、本腰を据えることとなった。