ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
 


青空の下、両サイドに広がる田園風景を、久遠さんは目を細めて見ていた。


私は風景じゃなく、久遠さんの横顔に釘付けになっている。



4年前と変わっていないように思ったけど、良く見ると、少し痩せたように見える。


フェイスラインや喉仏が際立ち、より男らしくなったみたい。



久遠さんは今、33歳。

男として、成熟する歳なのか。



何だろう、この気持ち……。

体の奥がキュンとしてしまう。

大人の色気に、酔ってしまいそう……。



だらしない口元で、ぼんやり運転席を見ていると、

久遠さんの視線が前方から、私に流された。



流し目も、薄く笑う唇も、色気たっぷりでドキドキしてしまう。



すると、こう言われてしまった。



「そんな顔されても、今は何もしてやれない。

発情するのは、夜にしてくれ」




は、発情!?

決してそんなヤラシイ気持ちで見ていた訳じゃ……ないとは言えないけど……。



からかわれてアタフタしている内に、あっという間に川原田家に到着した。



車を倉庫前に止めると、今日はご夫婦と息子さん、三人揃って出迎えてくれた。



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