ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
そこで、「しまった」と気付く。
発情している場合じゃなかった。
川原田さんは、大切なホップ農家さん。
くれぐれもトラブルになるような発言はしないようにと、久遠さんに釘を刺しておかねばならなかった。
車から下りようとしている久遠さんに、
「変なこと言わないで下さいね?」
と、詳細を省いて大雑把な注意をした。
すると、
「俺はいつも大事な要件しか口にしない」
そんな、若干心配な答えを返された。
久遠さんが先に車から下り、続いて私も下りた。
笑顔で迎えてくれる川原田家の三人に、久遠さんは名刺を渡して、まともな挨拶をしていた。
奥さんが、しげしげと久遠さんを見て言う。
「あんれまぁ。
社長さんが代わったって聞いてビックリしてたら、こんな若くてイイ男になったんだなぁ。
はぁ、たまげた、たまげた」