ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
そう言われて、箸を置いて溜め息をついてしまった。
いつもは確かに同じ内容の私の手作り弁当を、久遠さんも社長室で食べている。
でも……今日は違う。
今日は、久遠さんのお弁当を作る気分じゃなくて、
「出前でも取って下さい」
と、冷たく言ってしまった。
その理由は……
はぁぁぁ……。
あからさまにテンションの下がった私を見て、
吉本さんが「ケンカ中?」と聞いてくれた。
「ケンカと言うか……私が一方的にむくれてるだけで……。
久遠さんは悪くない……そうわかっていても駄目なんです。
いつもすぐ怒っちゃって……私って、可愛くない奥さんで、自己嫌悪真っ最中です……」
事の発端は、昨夜の出来事。
寝る前のひと時を、映画を見て過ごしていた私。
切なくロマンチックなラブストーリーに、どっぷりのめり込んで泣きながら見ていたら、
お風呂上がりの久遠さんが、リビングに戻ってくるなり、こう言った。
「作り話で、よく泣けるな……」
その言葉で、感動の涙が引っ込んでしまった。
代わりに込み上げてきたのは、
怒りの感情。
折角いいシーンだったのに、なんで余計なこと言うのよ!
こういうのは、感情移入した者勝ちだと思う。
ヒロインの気持ちになり、泣いたり喜んだりできるのが、映画の魅力なのに、
そんなこと言われたら、シラけてしまうじゃない!