ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
それならと、今度は後輩の千花ちゃんに同じことを言う。
「千花ちゃん、申し訳ないけど、これを社長に……」
吉本さんと違い、千花ちゃんは「いいですよ」と、書類を受けとってくれた。
いい後輩を持って良かったと、ホッとしたのは束の間のこと。
ニッコリ笑う千花ちゃんに、こう言われてしまった。
「久遠社長って、本当にカッコイイですよね〜!
挨拶しかしたことなかったから、一度ゆっくりお話してみたかったんです。
夏美さん、社長絡みの用事は、これから全部私がやりますよ?
私の方が夏美さんより若くてピチピチだし、もしかしたら……あんなことやそんなことが、あるかも知れませんよね?
私、頑張っちゃおうかな〜」
千花ちゃんに渡したばかりの書類を、慌てて取り戻す。
食べかけのお弁当を置いたまま、
「社長室に行ってきます……」
と、立ち上がった。
「頑張って〜」
ニヤニヤしている二人に見送られて、事務室を後にした。