ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
エプロンを着て、キッチンに立つ。
ほとんど使われた形跡のないガスコンロは、
ピカピカで綺麗だった。
ご飯を炊き、玉子スープを作る。
後は豚肉と野菜。
切った材料を、フライパンで炒め始めた。
今夜のメインディッシュは、
酢豚。
疲れている時は、酢が欲しくなる。
私が調理している間、彼はミカコさんとたわむれていた。
昨日、驚きの中で見た光景は、
二回目だと、平常心で見ることができた。
いい歳したイケメンが、ソファーに寝転び、ミカコさんに頬ずりしていても、
異常だとは思わない。
極普通の、変人的行動だと思うのみだ。
酢豚が完成し、皿に盛る。
すると、ミカコさんをケージに戻した彼が、
「いい匂いだな」
と近寄ってきた。
二人分の分量で作っていた。
私は彼と違い、まともな人間。
一応同居しているのに、
自分の分しか作らないような、
酷い女じゃない。