ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
 


エプロンを着て、キッチンに立つ。



ほとんど使われた形跡のないガスコンロは、

ピカピカで綺麗だった。



ご飯を炊き、玉子スープを作る。



後は豚肉と野菜。

切った材料を、フライパンで炒め始めた。



今夜のメインディッシュは、
酢豚。



疲れている時は、酢が欲しくなる。




私が調理している間、彼はミカコさんとたわむれていた。



昨日、驚きの中で見た光景は、

二回目だと、平常心で見ることができた。



いい歳したイケメンが、ソファーに寝転び、ミカコさんに頬ずりしていても、

異常だとは思わない。



極普通の、変人的行動だと思うのみだ。




酢豚が完成し、皿に盛る。



すると、ミカコさんをケージに戻した彼が、

「いい匂いだな」

と近寄ってきた。



二人分の分量で作っていた。



私は彼と違い、まともな人間。



一応同居しているのに、

自分の分しか作らないような、
酷い女じゃない。



< 46 / 453 >

この作品をシェア

pagetop