ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
怒っても睨んでも、ダメージを与えられなかった。
久遠さんは普通の調子で、
「まだ材料あるか?」
と聞いてきた。
「少しなら、ありますけど……」
彼は箸を置いて、立ち上がった。
何をするのかと思ったら、
食材を切り出した。
スピーディーにカットして、見事な手つきでフライパンを操り、
見た目に美しい酢豚を、たったの15分で完成させてしまった。
皿に盛られ、目の前に出された酢豚を見て、
ゴクリと喉を鳴らした。
なんて美味しそうな、酢豚なのだろう……
照り、艶、香り、盛り方、
全て完璧だ。
高級中華料理の店で、出てきそうな出来ばえだ。
思わず褒めてしまいそうになり、
慌てて口をつぐんだ。
肝心なのは味でしょう。
私の酢豚をマズイと言えるほどの味なのか、
厳しく審査してやろうじゃないの!