ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
初めての喧嘩とデート
◇◇◇
酢豚を食べた日から、三日後――
台車にコピー用紙や文具類をどっさり積んで、
私は今、社内を端から順に回っている。
必要物品の補充は、庶務課の仕事だ。
台車を押す私の隣には、
営業部チャラ男の堂浦さん。
今日は珍しく三国主任が外勤なので、私の監視役として彼が横にいた。
廊下を歩きながら、堂浦さんに言う。
「あの、私は誓って情報を漏らしませんので、ついて来なくていいですよ?
堂浦さんだって、営業のお仕事ありますよね?」
はっきり言うと邪魔なので、ついて来ないで欲しかった。
それを、当たり障りない言葉で伝えたつもりだが、
ヘラヘラ笑う彼に、こう言われてしまった。
「いいの、いいの〜。今日のオレッち、仕事ないから。
ほらほら、この髪色みて?
今までより、ちょ〜っと明るくしただけなのに、
うちの課長に怒られちった。
今日はお前、外回り禁止。
明日までに黒くしてこい。
だってさ〜!
髪染めて怒られるなんて、高校生かよって、ツッコミ入れたくなるよね〜。
大人なのに酷いじゃん。ねぇ?」