ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
 


私、何かお局様のご機嫌を損ねるような失態を、やらかしただろうか?

そう考えていた。



庶務課のお局様は、41歳の独身女性。



婚活パーティーに参加しまくっているのに、成果なしという噂を聞いている。



彼女の前で、“結婚”の二文字はタブー。


それが庶務課の、暗黙の了解事項だ。



気をつけているし、特にご機嫌を損ねることはしていないつもり……


そう考えて、一つの心当たりにたどり着いた。



原因は、久遠さんだ。



朝は一緒に出勤し、庶務課までしっかりキッチリ送ってくれる。



帰りも彼は、わざわざ庶務課まで迎えに来て、

私を連れて退社する。



この状況は、まだ数日のことだけど、

それでも社内に、妙な噂が立ち始めた気配がする。



昨日は他部署の女子に、

「ねぇねぇ、結婚決まったって本当?」

そう聞かれたばかり。



お局様を不機嫌にさせた原因は、
ソレだ。



24歳の私に、先に嫁に行かれる焦りが、

蛍光灯を取り替えろとの、命令に結びついたに違いない。



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