ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
急に動いたためバランスを崩して、背中から落ちるという危険な状況。
ギュッと目をつむり、衝撃を覚悟する。
ところがなぜか、いつまで経っても痛みは訪れなかった。
そろそろと目を開けると、堂浦さんの腕の中。
待ち構えていた彼に、横抱きに抱えられていた。
彼がニッコリ笑って言う。
「夏美ちゃん、俺なら君を、もっとイイ女にしてあげられるよ?
プレゼンまでの二ヶ月間、久遠じゃなく、俺の家で甘〜い生活送らない?」
密着すると、香水の甘い匂いがハッキリ感じられた。
とっておきの色気を放出しながら、堂浦さんが顔を近づけてくる。
「や、やめっ……」
“やめて”と全てを言わない内に、堂浦さんの顔が急に離れた。
首がグキッと折れそうなほど、
頭が後ろにのけ反っている。
彼の茶髪を引っ張ったのは、
久遠さんだった。
私の体がフワリと浮いて、
堂浦さんの腕の中から、白衣の腕の中に移動していた。