ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
チャラいけどモテるのは、女性にすこぶる優しいから。
そんなチャラ男の堂浦さんが、
私の前にしゃがみ込んだ。
笑顔だけど目は笑っていなくて、
何だか怖い。
彼は顔を傾けて、こんなことを聞いてきた。
「庶務課の田丸夏美ちゃんかぁ。
今、君は“夏美ちゃん”と言ったけど、自己紹介したわけじゃないよね?
もしかして……俺らの話を盗み聞きしちゃったのかなぁ?」
「え?えーと、盗み聞きではなく、聞こえちゃったと言いますか……。
あの、堂浦さん、顔が近いです」
どさくさに紛れて、危険区域まで顔を近づけてくる堂浦さん。
彼の肩を押し返しながら、斜め上を見上げた。
私を囲むのは、三国主任と堂浦さん以外にもう一人。
化学者みたいな白衣を羽織った、長身の男性もいた。