ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
久遠さんは私を抱えたまま、
脚立の下に置いていた、パンプスを拾い上げた。
堂浦さんに背を向けてから、
もう一言。
「さっきのは、全面的にお前が悪い。
ここの片付けは、お前がやれよ」
歩き出した久遠さんの背中に、
堂浦さんが独り言を言う。
「なーんだ、やっぱそうじゃん。
ヤルことやってんじゃん。
二人して否定するから、騙されちったよ〜」
もしかして、勘違いされてる?
久遠さんの腕の中にいるせいで?
驚きの波がおさまり、やっとまともに繋がる思考回路。
恥ずかしさが急上昇し、
慌てて久遠さんに言った。
「下ろしてください!
どこも怪我してないので、大丈夫ですから!」
そう言っても、久遠さんは下ろしてくれなかった。
私の重みを感じていないかのようにスタスタ歩き、
こう言われた。
「ダメだ。お前の靴に蛍光管の破片が入っている。
取り除くまで歩くな」