ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
この場には、もちろん部長さんもいるのだが、
やはりデスクトップのPCの上に、薄毛の頭頂部がチラリ見えるだけ。
今日も、存在感はちっぽけだ。
三人いるのに、二人切りの気がする空間で、
彼が謝ってきた。
「悪かったな。
堂浦はビールに関しては信用おける人間なんだが、女が絡むとふざけ過ぎる。
怒ったか?」
「怒るほどじゃないです……あのくらい平気です」
悪いのは堂浦さんであり、久遠さんではない。
謝らせたのが悪い気がして、平気なそぶりを見せた。
そんな私の気遣いに、彼は呆れる言葉を返してくれた。
「怒らないのか?そうか、良かった。
女を怒らせると厄介だからな。
ヤケを起こして、新ビールの情報をばらまかれたら困る。
堂浦には、気をつけるよう言っておかないと……」