ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
 


この場には、もちろん部長さんもいるのだが、

やはりデスクトップのPCの上に、薄毛の頭頂部がチラリ見えるだけ。



今日も、存在感はちっぽけだ。



三人いるのに、二人切りの気がする空間で、

彼が謝ってきた。




「悪かったな。

堂浦はビールに関しては信用おける人間なんだが、女が絡むとふざけ過ぎる。

怒ったか?」



「怒るほどじゃないです……あのくらい平気です」




悪いのは堂浦さんであり、久遠さんではない。



謝らせたのが悪い気がして、平気なそぶりを見せた。



そんな私の気遣いに、彼は呆れる言葉を返してくれた。




「怒らないのか?そうか、良かった。

女を怒らせると厄介だからな。

ヤケを起こして、新ビールの情報をばらまかれたら困る。

堂浦には、気をつけるよう言っておかないと……」




< 62 / 453 >

この作品をシェア

pagetop