ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
一気にまくし立て、
パンプスのヒールで、彼の素足を踏み付けた。
「痛ってぇ!」
そう叫んで、彼は思わず私の手を離してしまう。
その隙に外に飛び出し、エレベーターホールまで走った。
ちょうどこの階に止まっていた、
エレベーターに乗り込むと、
部屋着のまま追い掛けてくる、
久遠さんの姿が見えた。
彼に向けて思い切り、あっかんべーをする。
彼が追いつく前に扉は閉まり、
エレベーターは動き出す。
ざまぁみろと、心の中で笑っていた。
久しぶりに外を一人で歩いた。
夏の日差しがギラギラして、
蒸し暑い。
気持ち良いと言えない気候でも、
解放された気分で幾分スッキリする。
日陰を選んで10分歩き、最寄りの駅に着いた。
平日の出勤時間ほどではないが、
駅の利用者は多かった。
改札を通り、階段を上がる。
すると……
ホームの柱にもたれて腕を組む、
イケメンの姿が目に飛び込んできた。