ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
首から社員証をぶら下げているので、うちの社員に間違いない。
でも、初めて見る顔だ。
入社二年目の私は、全社員の顔を覚えているわけじゃないけど、
こんなに見目好い男性なら、絶対記憶に残るはずなのに。
白衣の彼は、とても綺麗な顔立ちをしていた。
緩いウェーブのついた短めの黒髪に、
切れ長で涼しげな目元が印象的。
全てのパーツが見事に整っていて、
チャラ男の堂浦さんとは違うタイプの、硬派なイケメンといった雰囲気だ。
はっきり言って、私の好みのど真ん中。
普段ならポーッと見惚れてしまうところだが、今は背中に冷汗が流れるのみ。
白衣のイケメンは腕組みして、
蔑んだ目で私を見下ろしていた。
「おい」
頭上から、低く冷たい声が降ってきた。
「は、はい……」
萎縮しながら、返事をする。
「お前はどこのスパイだ?
川上課長のチームか?それとも田宮のチームか?
まさか……羽田のところじゃないだろうな?」
「はい?」