ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
ホームに電車がやってきた。
私は座席に座り、
久遠さんは少し離れた位置で、
吊り革に掴まり立っていた。
一人を楽しみたいと私が言ったせいか、隣には来ない。
一応、気を遣っているようだ。
久遠さんの前の座席には、女子高生らしき二人組が座っていた。
彼女達の、声の大きな内緒話が、
嫌でも聞こえてしまう。
「イケメン過ぎて、まじウケルんだけど」
「隠し撮りしとく?」
「しとくー。
電車でイケメン発見なう。
拡散希望ー」
隠し撮りには、なっていない。
女子高生たちは、堂々とスマホカメラで彼を撮影し、
SNSにアップしてしまう。
もちろん、久遠さん本人も気付かない訳がない。
眉間にシワを寄せ、不愉快そうにひと睨みしていた。
久遠さんが睨んでも、二人組にダメージは与えられない。
なぜなら、この世で最強の生物は、女子高生だから。