ぎゅっと抱きしめて~会議室から始まる恋~
 


今、名前で呼ばれた気がしたけど……

気のせいじゃないよね?



彼の口から“夏美”という名前を何度も聞いてきたが、

それらは全て、新ビール夏美のことだ。



私を名前で呼んでくれたのは、
これが初めて。



驚きと共に、嬉しさが込み上げる。



私、どうしてしまったのだろう……。


彼は私の理想とは掛け離れた
“結婚に向かない人”なのに。



名前を呼ばれたことも、繋いでいる手の温もりにも、

鼓動がドキドキうるさく高鳴って、困ってしまう。



綺麗な寝顔を見ていられなくて、
目を閉じた。



今日は振り回すつもりだったのに、結局最後は私が振り回されてしまった。




――――……





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