ユキの果て
階段の方に来るけど、ヒカリらしき人陰はない。
その時、見知った人の姿にあたしは駆け寄る。
「ユキ!」
「え、黒沢?」
「ヒカリ、どこに行ったか知らない?」
飛びつきそうな勢いにユキが驚いているのはわかっているけど、どうしようもない。
人を気にしている余裕なんてないんだ。
「えっと、確か女子を避けて人のいない階段を使うって言ってたよ」
まさか本当に知ってたなんて。
でも今は、なんで知っていたかなんてどうでもいい。
「ねぇ、黒沢」
「え、なに?」
「去年、黒沢のクッキーは美味しかった。だから、────大丈夫だよ」
「っ、」
どこまで知ってるのかな。
ヒカリとあたしのいざこざ?
好きだという気持ち?
バレンタインのお菓子?
もしかしたら、全部かもしれないね。
にっこり。
別れてから初めて、ユキに満面の笑みを向けた。